かみかみおれんじ

子育ても息抜きもたいせつです

 ネジと紙幣・9/19マチネ&ソワレ

観てきました。

http://www.neji.ne.jp/


「ネジと紙幣」
based on 女殺油地獄 (旧題 「溶解」)

劇作・脚本・演出:倉持裕
出演:森山未來 / ともさかりえ / 長谷川朝晴 / 江口のりこ / 細見大輔 / 野間口徹 / 満島ひかり /小林高鹿 / 田口浩正 / 根岸季衣


★天王洲 銀河劇場 A列センター(マチネ)&C列センター(ソワレ)

※以下、全体的にネタバレかも!



未來さん初の*1ストプレということで、楽しめるかどうかすっっっごく不安でしたが、その不安は杞憂に終わりました。
ストーリー上、「良い」話だなあ…とも、「面白かったなあ」…と言うのも憚られますが(何しろ殺人のハナシだしさ)、この作品を観ることが出来て本当に良かったと思っております。なんだろう、観た後にジワジワ〜とクるこの感じは。
地方人ゆえ、上京するとおのずとマチソワする運命にある自分ですが、マチネを観た後は正直気が重くなってしまい、ソワレ観るの辛いな、どうしようかなとか思いました(笑) まあ、当然ソワレも観たワケですが、不思議なことに2回目は1回目を観た後に感じた、自分の中にあるもつれた糸のような感情がするすると解けていくのがわかりました。


…うん、パンフで倉持さんが述べられているように本当に過程を楽しむ為の作品なんだと思います。だからある程度流れが解っている2回目の方が、そのラストに至るまでの展開をアタマの中で整理しながら冷静に受け止められたんだと。じっくりとした再見に堪えうる、良く出来た脚本・演出だよなー、本当に。
んでもって、どのキャストもどんぴしゃで。シロートなんで、舞台の企画というモノは主演を決めるのが先か、題材が先か?なーんてことは全くわからないのですが、この物語の主人公・行人…未來さん、ハマってたなあ。まあ、この行人という人物は、今まで未來さんが演じることの多かった“イライラダメ息子”役の極致というか最たるもののよーなんで、初のストプレとはいえそこまで違和感を覚えなかったのかもしれません。
そして、この作品のキモ(?)といえばバイオレンスに次ぐバイオレンス。じめ〜っとした雰囲気の中で淡々と、でもテンポよく(時には笑いも交えながら)進む会話を切り裂く暴力シーンにはビクッとさせられます。暴力といえば、数年前パルコで観た「噂の男」でも印象的だったけど、あちらは登場人物皆、明らかにおかしかったからなあ。この「ネジ」については、飽くまでその辺にいそうな普通の人たちの嫌〜なところを描いているので、そんな暴力に代表される人間の暗黒描写についても余計身につまされる気がいたします…。キッツいわ、ホント。


そんな作品の主人公・行人(以下行ちゃん)につきましては、ぶっちゃけ自分はそれ程嫌悪感を感じなかったのですが…。イヤ、未來さんが演じてるからとかそういうわけではなくって。実際、身内にいたら確かに迷惑な人物だけど、間違った方向にまっすぐな、(自分に)正直すぎる人というか。あまりにも近視眼的なものの見方も、自分もそんな側面を持っているのでそんなに他人事とは思えないぜ、的な印象すら受けてしまいましたよ正直言って。ちょっとでも“自分はダメ人間”的自覚がある者にとっては、彼の行動はそれ程突飛なものに思えないかもしれない、そんな描写がなされていたと思います。
決して「絶対的なワル」ではない行ちゃんが、沢山あった筈の出口をひとつひとつ、確実に塞がれていく様が克明に描かれているので、やっぱりラストシーンは哀しい…というよりはやりきれなさが残ります。
ラスト、お金の使い道について行ちゃんが桃子に説明していれば、桃子は納得して行ちゃんにお金を貸し、結果殺人なんか起こらなかったんでしょうか。それともそれでその場は収まっても、また同じようなことの繰り返しで結局また殺人に至るような結果に終わってしまったでしょうか。それとも、桃子の夫である永太郎さんが桃子と行ちゃんの関係を誤解しなければ、あんな大金が桃子の手にあるということは無く殺人なんて起こらなかったんでしょうか。


桃子の言う「証拠」*2についても。当初、自分は舞台を観ながら勝手に「潔白の証」としてのお金だと捉えていました。自分の身の潔白を証明するには、あのお金は手付かずの状態で戻ってきた永太郎さんに示す必要があって、あのお金を行ちゃんに渡す(=お金を使う)と自分の潔白を証明出来なくなるので、あんなに行ちゃんの申し出を拒んだんだという風に勝手に思い込んでおりましたが。
よくよく冷静になって考えれば、そんなまどろっこしいことせずとも自分の潔白を証明するには、その場でお金を佐和子母さん達に突き返せば済むハナシですよね…。ってことは、やっぱり無意識だったかもしれないけれども桃子は行ちゃんのことを…。あああ。


なーんて、考えれば考える程堂々巡りになってしまう感じなのですが。
次観るのは愛知公演になってしまうので、それまでは自分の中でぐるぐるさせておきたいと思っております。


あ、あと印象に残っている言い回しとしては。
行ちゃんの「始まりと終わり」、和佳ちゃんの「100パーセント栗尾さん」、辰男お父さん「なんとなく」を否定するくだり、ですかねー。細かい台詞が既にあやふやになってしまっているので、戯曲本かDVD発売して欲しいです…。

*1:うーん…婚礼はまごうことなき「ストプレ」だったと思うんだけどなあ…。という想いがまだ自分の中にありましてw

*2:あれ、「証明」だっけ??どっちだっけ?